マスカットで造られる天然甘口ワインが有名な地区
ボーム・ド・ヴニーズはローヌ南部の東にあり、ヴァケラスの南部に位置するAOC。ぶどう畑は自然公園ダンテル・デ・モンミライユの裾野に広がり、起伏によりミストラルから守られている。ジゴンダスやヴァケラスから近く、テロワールやワインのタイプも似ているが、畑の大部分がより高地にあり涼しい気候であるため、ボーム・ド・ヴニーズのワインはより清々しい風味が際立っている。栽培面積は約610ヘクタール。
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズの産地
このAOCの認定は2005年とまだ新しい。それ以前はコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュのAOCでそこから昇格し、独立した形となる。しかし、この地で造られるヴァン・ドゥ・ナチュレル(VDN。天然甘口ワイン。ワインの発酵中、果汁にブランデーを入れ、発酵を止めて甘みを出す酒精強化ワインの一種)はAOCミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズMuscat de Beaumes de Veniseとして1945年から認定されている。VDNの栽培面積は約490ヘクタール。
特徴とぶどうの種類
フルボディでも爽やかな赤ワイン
スティルワインは赤のみの生産(白、ロゼも造られているがコート・デュ・ローヌのAOC扱い)。使用品種はグルナッシュを主体に、シラーやムールヴェードルと混醸する。外観は色の濃さが特徴的。ワインのタイプとしては赤いベリーの果実味が強いフルボディタイプだが、ミネラルの爽やかさも合わせ持つ。相性料理は肉料理のワイン煮込みやクセのあるチーズなど。
食前酒やデザートワインに最適なVDN
VDNは赤、白、ロゼとも「ちいさなミュスカ」と呼ばれる小さな小粒のミュスカ・ア・プティ・グランから造られる。代表的な白は、黄金色に輝く美しい外観と白桃、かりん、パッションフルーツなど完熟した甘い果実の香りが特徴。口に含むとハチミツのような甘さが広がり、繊細な香味が長く残る。食前酒やデザートワインに最適。
なお、VDNは天然甘口ワインとされているが、「甘さ」が天然という意味。アルコールの強さは人の手が加えられたものである。